体脂肪のメカニズムから健康戦略を考える

中年になるとついてくるこの内臓脂肪。見た目や健康上悪いのはわかるけど一向に減る傾向が見られない。「どうにかならないのか」とダイエット方法を見つける前に脂肪のメカニズムを調べてみた。

目次

1.体脂肪について

1)脂肪の種類

・脂肪には皮下脂肪、内臓脂肪、異所性脂肪の3種類。

内臓脂肪

胃や腸などの臓器の周りに蓄積される脂肪。

エネルギーに変換される脂肪で溜まりやすく、減らしやすい。 

生活習慣病の元になる。

皮下脂肪

下腹部や腰、お尻などの皮膚のすぐ下につく脂肪。

体温の維持や内臓、骨を保護する。

少しずつ蓄積されるが減りにくい。

異所性脂肪

本来、たまるべき場所ではない肝臓や心臓、膵臓などの臓器や筋肉に蓄積される脂肪。

糖尿病や脂肪肝などの疾患と関わっているとされている。

※「イラスト&図解 ゼロから知りたい!内臓脂肪の教科書」 前川 智【著】 西東社より引用。

2)脂肪が増える原因

①摂取カロリーの過多

脂肪が増える原因は「摂取エネルギー」が「消費エネルギー」を超えて余剰になったエネルギーを肝臓が中性脂肪へ変え血液を通して内臓脂肪や皮下脂肪などになるためです。体脂肪は皮下脂肪→内臓脂肪→異所性脂肪の順に蓄積されていきます。  よく耳にするカロリーとはこのエネルギーの単位になります。

②基礎代謝量の低下と運動不足

基礎代謝量は歳をとるにつれ低下していき30〜49歳での基礎代謝の基準値1は1〜2歳のおよそ1/3ほどになります。

運動量も近年ではパソコンを使った仕事が増えたりなどで体を動かす機会が減っています。

③アルコールの摂取

ハイボールや焼酎は糖質0なので太らないのではと思いがちですが、アルコールの代謝も栄養の代謝も肝臓が担います。代謝の順序としては「アルコール」が最優先でその後 「糖質」 「脂質」 「たんぱく質」の順で行うため、後回しになった栄養素は消費されず体脂肪の蓄積に回ることがあります。

前川先生も自身の本では肥満患者の内臓脂肪が増える原因として①食べ過ぎ、②運動不足、③飲み過ぎの順になると書いてあります。

2.栄養素について

6種類ある栄養素のうちカロリーになるのは糖質、脂質、タンパク質の3種類。

それぞれの特徴を解説します。

糖質(炭水化物)

  • 糖質はエネルギーになる栄養素の中で最も重要。
  • 日本人の一般的な食事では、摂取エネルギーの60%前後になる。
  • 米、小麦のほか、いも類、とうもろこし、果物や砂糖に含まれる糖質もエネルギーへ。
  • 脂質の代謝にも関与。余った糖質は、グリコーゲンや中性脂肪に形を変えて体内に貯蔵。

脂質

  • 1gの脂質は9kcalのエネルギーを発生し、少量でも高カロリーで効率のよいエネルギー源。
  • 細胞膜を構成する、身体の機能や生理作用を一定に保つ役目。
  • 食品の脂質部分に含まれる脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の供給源となる働き。
  • 血液中に含まれる脂質には脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の4つがある。
  • 脂肪酸には飽和脂肪酸(動物性脂肪)と不飽和脂肪酸(植物性脂や魚類の油)がある。
飽和脂肪酸

 融点が高く、常温で固体。取りすぎると肝臓でのコレステロールの形成を促進し、血中コレステロール濃度を上昇させる。

・主にパルミチン酸やステアリン酸 など。

不飽和脂肪酸

 融点が低く、常温で液体。血中のコレステロール濃度を低下させる働きがあり、動脈硬化の原因となる血栓の形成を防ぐ。

・主にオレイン酸やリノール酸 など。

たんぱく質

  • たんぱく質は多数のアミノ酸がつながったもので、生体のたんぱく質は約20種のアミノ酸からできている。
  • そのうち、人間の身体に必要でありながら体内でつくることのできないものを必須アミノ酸という。
  • 体中にとり入れられたたんぱく質はアミノ酸に分解されて、筋肉、皮膚、毛髪、爪、臓器、神経などの細胞組織の成分や、酵素、ホルモン、免疫物質、筋収縮や輸送に関与する物質など、それぞれの働きに必要なタンパク質に生合成される。
  • 糖質の摂取量が足りないときには、分解されてエネルギーとして消費される。
  • 糖質の不足はたんぱく質の本来の機能を奪うことになる。

ミネラル(無機質)

  • 人間の身体は約60種類の元素で構成されている。
  • 主要元素と呼ばれる水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)が約95%を占める。
  • その他の元素を総称してミネラルという。
  • 特に栄養素として不可欠な16種類を必須ミネラルといい、骨や歯、筋肉や血液などの成分となるほか、さまざまな生理作用に関わっている。
  • ミネラルは体内でつくることができないため、食べ物からとらなければならない。
  • ミネラルの不足はさまざまな機能の障害を招き、骨粗鬆症や貧血、筋力の低下、味覚障害などの疾患を引き起こすことがあるが、反対に過剰になっても障害をもたらす。

ビタミン

  • 糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助け、生命を維持するための生理作用に不可欠な栄養素。
  • ビタミンには脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2種類がある。
  • 脂溶性ビタミンは脂質と一緒に体内に貯蔵することができるが、水溶性ビタミンは体内に貯蔵できる日数が脂溶性ビタミンにくらべ少ないため、不足しないようこまめに摂取することが必要。
  • ミネラルと同様、さまざまな生体反応に関わっているため、不足や過剰摂取により多くの機能障害を起こす。

食物繊維

  • 食物繊維は、人の消化酵素で消化されない食物中の成分の総称。
  • 食物繊維は主に穀類、野菜、果物、いも類、海藻、甲殻類などに含まれる。
  • 食物繊維の多い食べ物は自然とかむ回数を増やし唾液の分泌をうながすほか、少量で満腹感が得られ、食べすぎの防止に役立つ。
  • 小腸での糖質の消化吸収をゆるやかにするため、血糖の上昇が抑えられて糖尿病の予防につながる。
  • コレステロールや胆汁酸を吸着するものもあり、血中コレステロール値も抑えることができる。
  • 大腸では腸内細菌による発酵を受けてエネルギー源(短鎖脂肪酸)を生成するほか、腸内の発がん性物質などの有害物を抑える有効な菌を増やす。
  • 便容量が増え、腸内細菌が生成したガスの刺激を受けることで、排便がうながされて便秘が予防される。
水について

 ・水は栄養素ではありませんが栄養素を活かすためには必要になります。

 ・水が体重に占める割合は成人で平均60%~66%です。その3分の2は細胞内液で、残りが血漿、組織間液などの細胞外液となっています。

・水は短時間で体内に吸収されて、酸素や吸収された栄養素を血液などに溶かし、すべての細胞に運びます。

・また老廃物を体外に運ぶことも重要な役目です。汗などでの体温の調節、体液の成分のバランスを保つ役割も担っています。

国立循環器病研究センターホームページ 「栄養に関する基礎知識」から引用。

3.三大栄養素の代謝と過剰、不足が招くトラブル

これらの6栄養素でカロリーが生じるのは糖質、脂質、たんぱく質の3つ。消化の後、どの様に代謝されるかと過剰、不足で起こるトラブルを解説します。

内容は国立循環器病研究センターホームページ 「栄養に関する基礎知識」から引用させて頂きます。

糖質(炭水化物)代謝の流れ

  1. 消化によってグルコース(ブドウ糖)などに分解され小腸粘膜から吸収された後、肝臓へ。
  2. 肝臓からそのまま血液中に運ばれて、体の各組織でエネルギー源となる他、肝臓、筋肉ではグリコーゲンとして蓄えられる。
  3. グリコーゲンは再びグルコースに転換されてエネルギーの生成に使われる。
  4. グリコーゲンの貯蔵量には限界があり、余分なグルコースは脂質となって肝臓や脂肪組織に貯蔵。

糖質(炭水化物)過剰、不足のトラブル

糖質過剰

・グリコーゲンの貯蔵量には限界があり、余分なグルコースは脂質となって肝臓や脂肪組織に貯蔵されて肝臓や脂肪組織に溜まり、肥満、脂肪肝につながる。

糖質不足

・糖質が不足すると、脂質より先にタンパク質がエネルギー源として消費され本来の働きを妨げます。
・脂質の代謝にも関わっているため、脂質代謝が行われにくくなります。

脂質代謝の流れ

  • 小腸から吸収され、血液によって皮下、腹腔、筋肉の間などにある脂肪組織に運ばれて体脂肪として貯蔵。
  • エネルギーが不足すると必要に応じてエネルギー源として消費される。
  • 肝臓に貯えられた脂質からはコレステロールがつくられます。その大部分が胆汁の成分として使われるが、そのほか細胞膜や神経の成分となったり、ステロイドホルモンの原料になる。

脂質過剰、不足のトラブル

脂質過剰

・取りすぎはコレステロールと中性脂肪の増加につながる。
・コレステロールの摂りすぎは動脈硬化、心臓疾患や脳梗塞につながる。
・特に牛肉、豚肉に多く含まれる飽和脂肪酸には血中のコレステロールを増やす働きがあるため、摂りすぎに気をつける。
・魚油や植物油に含まれる不飽和脂肪酸には血中コレステロールを下げる働きがあるので比較的安心。

脂質不足

・コレステロールにはホルモンや細胞膜の成分となる重要な働きがあるため、少なくなりすぎると細胞膜や血管壁が脆くなるなどの異常が現れます。

たんぱく質代謝の流れ

  • 食物中のたんぱく質はアミノ酸に分解され、小腸から吸収される。
  • 肝臓に運ばれたアミノ酸は一部がたんぱく質に合成され、その他のアミノ酸は血液によって身体の各組織に運ばれ、組織たんぱく質に合成される。
  • 合成されたたんぱく質は一定の割合でアミノ酸に分解され、絶えず新しく合成されるたんぱく質と入れ替わっていきホルモン、血球、免疫物質の形成などにも使われる。

たんぱく質の過剰、不足トラブル

たんぱく質過剰

たんぱく質の過剰な摂取は老廃物である窒素化合物を増やし、腎臓に負担をかけることになるので、腎臓病の人は注意が必要。

たんぱく質不足

筋肉、皮膚、毛髪、爪、臓器、神経などの細胞組織の成分や、酵素、ホルモン、免疫物質、筋収縮や輸送に悪影響を及ぼす。

(身体の組織をつくるたんぱく質は、特に発育期、妊娠期には十分に摂取する必要がある。)
(食品によってたんぱく質に含まれるアミノ酸の種類が異なるため、必須アミノ酸(身体に必要で体内では合成できないアミノ酸)をたくさん含んでいる卵、肉類、魚、大豆食品、米をバランスよく組み合わせることでより 栄養価の高いたんぱく質を得ることが大切です。ただし、肉類の場合は同時に飽和脂肪酸も摂取することになる点を考慮して、食事にとり入れる割合を考えることが大事。

4.適切なカロリー計算方法と三大栄養素の摂取量

摂取カロリー計算方法

  1. まず自分の理想体重を計算します。身長(m) × 身長(m)× 22 = 適正体重2
    (身長160cmの場合は1.6x1.6x 22=56.32kg)
  2. 適正体重に作業強度を掛け算します。作業強度の目安は成人では 25〜30kcal〈キロカロリー〉
    (軽作業の仕事や肥満の人、高齢者の場合は25kcal。強作業の仕事や痩せている人、若い人の場合は 30kcal を目安とする)今回は事務仕事であまり体を動かさない人を想定して計算します。
    その場合56.32×25=1,408kcalとなり、仮に小数点が出た場合は四捨五入します。 3
  3. 三大栄養素のバランスに当てはめてカロリーを計算する。4
    ・炭水化物 50〜65% ・脂質 20〜30% ・たんぱく質 13〜20%
    例)1日の摂取カロリーを1,408kcalとし炭水化物55%、脂質25%、たんぱく質20%とした場合。
      炭水化物のカロリー量は770kcal、脂質は354kcal、たんぱく質は284kcalとなる。

記事の参考冊子

 「イラスト&図解 ゼロから知りたい!内臓脂肪の教科書」 前川 智【著】 西東社

 ロジカルダイエット – 3か月で「勝手に痩せる体」になる  清水 忍【著】 幻冬舎新書

 

  1. 厚生労働省
    日本人の食事摂取基準 2015年度版
    第一出版, 2015. ↩︎
  2. 日本医師会 HP参照 ↩︎
  3. 糖尿病ネットワークHP 2. 食事療法のコツ(1) [基礎]参照 ↩︎
  4. 農林水産省HP参照 ↩︎
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